モハメド・アリの伝説 Part 「金メダル再び」

99.12.11

1960年 ローマオリンピック ライトヘビー級で金メダルを取った
アリ(カシアス クレイ) 故郷で待っていたものは、根強い人種
差別だった。絶望したアリは橋の上から川にメダルを捨ててしまう。
その後 60年代、70年代と幾多の名勝負を勝ち抜き伝説を作った。
しかし、アリが他の名ボクサー、各界アスリートのスーパースター
と一線を隔す存在となったのは、その政治的活動のためだ。
ブラックモスレムに入信し、マルコムXに傾倒する。ベトナム戦争
が激化し、反戦活動の象徴になっていく。
しかし、76年レオンスピンクスに敗れ事実上引退すると、その後
彼を待っていたものはパーキンソン病だった。顔はこわばり、口は
回らず、手は震える。蝶のように舞い蜂のように刺し、大口をたた
いた姿とはあまりにも対照的。みじめだった。
1996年 アトランタオリンピック。聖火の最終点火者はなんと
モハメド・アリだった。鉄仮面のごとき表情。ブルンブルン震える手。
あの手で聖火は点火できるのか。世界中 数十億の人が注目する
クライマックス。失敗したらどうするんだ。あのかっこよかったアリが
なにもこんな醜態を世界中に晒さなくても。私のような肝っ魂の小さな
日本人はどうしてもそう思ってしまうのだった。しかし、そんな同情は
彼にはまったく通用しなかった。彼の奥さんの話しでは、彼は今が
一番幸せなのだそうだ。目をつぶると今でも戦っているのです。
ジョーフレージャー、ジョージフォアマン、ケンノートン達を相手に。
バスケットボール決勝。USAドリームチーム対ユーゴスラヴィア
そのハーフタイム、モハメド・アリがコートに現れサマランチ会長から
金メダルが授与された。バスケットの大男達に囲まれ祝福された
小さなアリの顔が、まるで子供のように、なんともうれしそうに微笑んだ。
36年前、故郷の川に捨ててしまった屈辱の金メダルは、こうして再び
アリの胸に戻ったのである。
私はこの光景に喉がつまって、こみ上げて来るものを押さえることが
できなかった。