1.「耳が聞こえない」

99.11.11

なんのまえぶれもなく突然やって来た。
1999年10月26日午前4時。突然の耳鳴りで目がさめる。
初めは夢の中で「ピー」と目ざましがなっていた。「早くとめてよー」
と言っていたが、実はひどい耳鳴りだったのだ。
こんなのは初めてだった。「変な寝かたをしてたのかな」
頭をふってみる。耳を触ってみる・・・・・・。「ギョッ!」とした。
右の耳がまったく聞こえていない。夢か・気のせいか・すぐに治るのか。
パニックに陥った。寝ている妻に言う。妻は起き出して家庭医療辞典を
調べた。「突発性難聴」が最もちかい。とにかく早期治療が重要とあった。
原因はわからない。もしつづいて左も聞こえなくなったらと思う。まったく
音の無い世界。そうなったら言葉も失ってしまうのか。
静寂の恐怖が巨大な積乱雲のようにみるみる広がり真っ暗になる。
朝一番で自宅近くのA病院へ行く。聴力検査を念入りにやる。
検査機の最大音量でもまったく聞こえていない。やはり「突発性難聴」
と診断される。さらに「即入院して治療すれば治る可能性がある。」
と宣告される。再び頭が真っ白になる。なんとか一日猶予をもらい、
午後から妻と店へ行きパソコンの操作を教える。数時間で2台ある
コンピュータ類の操作をマスターできようはずもない。焦ってくる。
どっと疲れた。
10月27日午前9時半A病院へ入院する。約半月の病院生活が始まる。
右耳が聞こえない以外、体はどこも悪くない。最近のドラマや映画の
影響で病院生活には興味を持っていたのだ。寝たり起きたり、ボケーと
しているのも好きだし、なるようにしかならぬ。ケセラセラだ。
初めはわりと楽観的だった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく